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大物感を漂わし、ターミネーターのようなゴルフでプロを圧倒する松山英樹という男

アマチュアの松山英樹選手(東北福祉大2年19歳)が三井住友VISA太平洋マスターズに優勝するかもとのことで
日曜日急遽取材に駆けつけた。
でも、正直、アマチュアが、プロが目の色を変えてタイトルを欲しがる
太平洋マスターズに勝つことはないだろうという気持ちのほうが大きかった。
その予測は見事に外れた。
というより、通常の常識は通じない選手。
従来のゴルフの範疇をはるかに超えたタイプの出現といったほうがいいかもしれない。
これまでなら、優勝がかかった状況では、プロの高度な技術、迫力、威圧感、駆け引きなどの前には、ア
マチュアは圧倒されて、自滅するというパターンが常識だった。
プロとアマチュアの差は、まさに大河の幅ほどの隔たりがある-と思ったのは
常識に囚われすぎたこちらの誤りだったことに気付いたのだ。

大物感を漂わし、ターミネーターのようなゴルフでプロを圧倒する松山英樹という男_e0208133_1519323.jpg
300ヤード超えのドライバーだけでなく、ショートゲームも上手い


大ギャラリーに囲まれた最終ラウンド。
だが、松山選手の悠揚たる態度、表情は変わらず、
ゆったりしたスイングリズムにいささかの変動も見られない。
むしろゴルフを楽しむ風情が、争うプロを戸惑わせる。
圧巻だったのは最終18番である。
この時点で松山選手は通算11アンダー、同じ組の谷口徹プロは9アンダー。
すでにホールアウトした今年のマスターズチャンピオン、チャール・シュワーツェル(南ア)や、
日本での賞金王がほぼ確定している韓国のベ・サンムンらは10アンダー。
松山選手がボギーを叩かない限り、プロの優勝の可能性はない。
18番ホールは、517ヤードのパー5。
軽い打ち下ろしでやや左ドッグレッグ、段差の大きな受けグリーンの右には池のおなじみの御殿場コース名物ホール。
プロにとってはアイアンで2オンするバーディ、もしくはイーグルを狙えるホールである。

 
ここでプロの凄みが出る。
残り215ヤードほどの第2打を谷口プロは、ピン手前2・5メートルに2オン。絶好のイーグルチャンスである。
日本オープンに2度勝ち、賞金王も獲得した歴戦のつわものならではの起死回生のショットだ。
松山選手はといえば、何と340ヤードのドライバーショットで右ラフ。
残りは175ヤードほどだからショートアイアンで打てる。
だがプレッシャーのかかった状況では、この距離でも簡単にボギーが出る。

大物感を漂わし、ターミネーターのようなゴルフでプロを圧倒する松山英樹という男_e0208133_15205873.jpg
18番で、イーグルを決めて大ギャラリーも大興奮(黄色いズボンが松山、赤いズボンは谷口)


事実、数組前の石川遼プロは、17番で劇的なホールインワンで通算9アンダー。
18番は同じく340ヤードのフェアウェーど真ん中の絶好の位置。
ここでイーグルを出せば松山選手を捕らえることが出来る。
ところがイーグルを意識した石川プロは、8番アイアンをリキンでダフリ、右の池へ打ち込んでしまった。
ウォーターショットを試みたが、シャンク気味にグリーンを外して、3メートルの距離をかろうじて入れ、
パーに終わった。
追いかける石川プロより、優勝がかかった松山選手にすれば、最高にプレッシャーのかかる場面。
ましてや同組みの谷口プロは、目の前でスーパーショットを放っている。
「いくら何でも」というのが常識的な見方である。

 
ところがここで8番アイアンで打った松山選手のショットはピン右50センチにつけるスーパーの上を超えるショット。
ちなみに、ピンとグリーンエッジの距離はわずか5メートルにも満たない。
ちょっとでもスライスすれば、刈り込んだ斜面でボールは確実に池に転がりこむ。
優勝がかかった場面では安全に左を狙い、うまく2パットのバーディで収めれば-それが“常識”のゴルフといわれてきた。
いわゆるゲームマネジメントである。
その常識派の筆頭にいる谷口プロが思わず苦笑いしたのも、“守旧派”の私としてはよく分かる。
谷口プロが慎重にイーグルを沈めたものの、相手が50センチではいかなるすべもない。
簡単にイーグルを決めた松山選手が、大歓声の中で両手を高々と掲げたのはいうまでもない。

大物感を漂わし、ターミネーターのようなゴルフでプロを圧倒する松山英樹という男_e0208133_15222057.jpg
テレビインタビューも朴訥で、洒落た言葉もないのが却って大物のムードを漂わす


普通ならこのビッグトーナメントで、それもアマチュアの身分で優勝したのだから、
興奮、感激、全身で喜びを表すのが常識。
ところが、本人は特別変わったことをしたという素振りもない。

「プロの試合も、アマチュアの試合もやっていることは同じです。
強いていうならアジアアマ(優勝者は翌年のマスターズ出場の権利を得る。
昨年の同大会では松山選手が優勝し、今年のマスターズに出場、全体の27位でローアマに輝く。
今年も逆転優勝で2年連続マスターズ出場が決定)は勝ちに行きましたけど、
この大会は経験を積むための気持ちで出て、ゴルフそのものは何も変わりません。
それより、初日に3パット2回、今日(最終日)も1回。
このくだらないミスが出ないようにするのが今後の課題です」
これプロが聞いたら怒りそうな言葉だが、本人にはまったく他意はない。
 
それどころか、マスターズのローアマと、この大会の優勝とで、どちらが嬉しいという質問に
「別に、同じくらいです。もしこの大会に勝てた原因を挙げれば、マスターズのローアマを取っても
行動パターンを変えなかったことことかもしれません。
実際、あれ以来も僕のゴルフがどんなタイプなのか、未だにわかりませんから」

世界のマスターズのローアマも、太平洋マスターズの優勝も、目指すゴルフの通過点、それを嫌味もなく言ってのける。
太平洋マスターズでのドライバーの平均飛距離は300・33ヤードで2位
(石川遼選手は288・83ヤードで15位)飛んで曲がらない。
本人いわく「ドライバーの飛距離はもっと伸ばしたい。
飛距離と、方向の安定性は僕の中では同一できると思っていますから」
“より遠く、より正確に”とのスタイルを掲げて世界の頂点に立ったジャック・ニクラスを彷彿させる言葉。
180センチ、85キロの体格、茫洋とした性格、洒落た身なりも言葉もない。
最終日前夜も大好物の寿司を3人前ペロリと平らげ、熟睡するという神経の太さもニクラス並み。

プロも、コースも関係なく、ピンをデッドに狙っていくターミネーターのようなゴルフ。
まさに異次元世代を代表するとんでもないゴルファーが現れた。
by golf-mkou | 2011-11-16 15:23